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コペンハーゲンでTerm Sheet Battle.やっぱり英語!

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しっかり働く秋シーズンの到来

スウェーデンの南部では、学校の新学期も始まり街に人が戻ってきた。今週のマルモでは、街中が無料のコンサートで溢れる恒例のマルモ・フェスティバルと、海外からの参加者が今年は35%となり年々評価が高まるThe Conferenceが開催され、夏の終わりにふさわしい賑やかな1週間となる。

世間はのんびりしていてもスタートアップ達くらいは夏の間も働くかも?との予想は見事に裏切られ、私のオフィスのあるマルモの老舗インキュベーターMINCでも、1階に入っているレストランも7週間の夏季休業。コワーキングスペースもとてもガランとしていた。やはり休暇を取らずに働き続けるなんてそんな非効率なこと(!)はしないらしい。

エンジニアの創業者もTerm Sheetの理解が必須

そんな空気の中、先週コペンハーゲンのStartupbootcamp MobileTerm Sheet Battleが開催された。"The Copenhagen Startup Community"と謳う#CPHFTWを支えるベンチャーキャピタリスト、弁護士、シリアル・アントレプレナーの3名がそれぞれの通常の立場から、シード投資用のサンプルTerm Sheet (Summary of Terms for Sales of Series "Seed Preferred Shares"、A43ページ)を使って、150名近いスタートアップの参加者の前で適宜説明を入れながら互いに有利な条件になるように交渉を進めていく。

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"Pre-money Valuation", "Liquidation Preference", "Anti-Dilution" や"Cliff"といった通常の生活では出会わないけど、会社を立ち上げ投資を受ける段階では理解しないと話にならない契約用語とその常識的な落とし所等などの説明を交えながら、みっちり2時間。

夕方でお天気が良かったにも関わらず、法律用語とExit時の計算に、多くが大学生から20代後半くらいに見えた参加者はしっかり取り組んでいた。

長くソフトウェアのライセンス契約を専門とし、契約書には慣れている私も疲れたし大変勉強になったが、若い参加者からの「あんな分かりきった基本用語は説明しなくてもいい」、「ベンチャーキャピタリストは本音を話してないのでは?」、「別のとこでやったこじんまりしたBattleの方がよかった」といった厳しい(生意気な?)評価を帰り道で聞くのも楽しい。

意見を言い合っていたのは、コペンハーゲンのアクセレレーターで机を並べるスウェーデン人や香港人のスタートアップ達。そこで改めてバトルは最初から最後まで英語で行われ、Term Sheet自体ももちろん英語であったことに気がついた。そう言えばこのあたりのスタートアップ界隈での情報発信はすべて英語だ。

交渉時のダイナミズム、モメンタムを掴むには

小国ゆえに最初から世界を狙い、英語でビジネスが当たり前の北欧。以前、楽天が日本人同士でも社内公用語を英語にすると聞いた時には違和感を感じたが、それくらいしないとダメな時代はもうとっくに来ていたのかもしれない。会話や交渉のダイナミズムやモメンタムを掴むには、やはり交渉相手と直接同じ言語で話すのが一番。

プログラム言語ならいくつもマスター済みの優秀なプログラマーなら、後1つ、英語くらいは問題ないはず。日本のスタートアップのこれからに期待せずにはいられないし、彼らを支援する日本のアクセレレーターやインキュベーター側にもますますその視点が必要だろう。日本のVCと日本のスタートアップ間の契約書が今も「甲、乙、」だとすると、その時点で世界への距離は北欧のスタートアップよりは少し遠い。

* VC契約周辺で抑えるポイントを日本語でしっくり理解するには、以下のサイトが超充実かつ、とてもわかりやすいです。優れたサイトをありがとうございます。

福島雅和さんのStartup Innovators

磯崎哲也さんのisologue コーポレートファイナンス入門

© Hiromi Blomberg 2020

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