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ダイナミックにダイナミックな都市をつくる・マルメ

若者人口比率・ダイバーシティ・ダイナミズム

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サッカーではマルメFFがセルティックに勝利し、ビジネスではIBMがマルメに300人規模のClient Innovation Centerを設立するとの報道もあり、私の周りはちょっとしたお祝いムードの今週のマルメ。隣国デンマークの首都、コペンハーゲンの国際空港から電車でわずか20分の好位置にあるマルメは、30万人の住民の約半数が35歳以下という"A Young City"だ。

IBMが北欧では初となる戦略的施設の所在地にマルメを選んだ理由としても「若者人口比率の高さ、ダイバーシティ、ダイナミズム」が挙げられている。マルメでは177カ国の人が住んでいて155の言語が話されており、住民の30%強が外国生まれだ。

成功した政治的判断とダイナミズム

19世紀半ばに世界最大級の規模の造船所ができ造船・工業の街として発展を遂げたマルメも、造船所が1986年に役目を終えた後は大規模な人口の流出が続いた。

1990年代前半にスウェーデン全体を襲った金融危機と相まり、失業労働者の町という暗いイメージを背負ったマルメだったが、1994年に社会民主労働党のIlmar Reepalu(イルマール・レーパルー)が市長となってからは、数多くの戦略的重点投資案件が大胆に決定され実施されていく。

若者を呼び戻し、都市を再定義

デンマークとスウェーデンを繋ぐエーレスンド大橋プロジェクトが1995年に開始され2001年に橋が完成。両国の間で商圏や労働市場が一気に広がった。1998年に新しく設立されたマルメ大学はメディアやコンピューターサイエンスといった今風の魅力的な学科に注力し、若者達がマルメに戻ってくる流れを作り、今日では2万4千人が学ぶ高等教育機関へと発展した。

2001年には造船産業の撤退で使い道のなくなっていた港湾エリア西地区で、都市建築博覧会[Bo01]が開催された。会場は博覧会の後そのまま高級アパートの立ち並ぶ洒落たウォーターフロントに生まれ変わり、現在に至るまで「ヴェストラ・ハムネン("西港")地区」として成長を続けている。

ヴェストラ・ハムネン地区

ヴェストラ・ハムネンのマルメ大学の建物が集中する周辺には、マルメ市が2001年から運営するスタートアップ・インキュベーターのMINCや、メディア・デザイン・ウェブサービスといったおしゃれな会社が数多く入居するMedia Evolution等がすべて徒歩圏内にあり、人との出会いに事欠かない。

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Mincのスタートアップヒーローたち

MINCの入り口にはスタートアップ・ヒーローたちの写真が大きなポスターとして飾られ、人々の目を引く。数ブロック先では、インターナショナル・レベルのコンサートが開催される新ホール・Malmö Liveのこけら落し公演が近々予定されている。

これといった魅力に欠けたマルメが、この15年でアメリカの雑誌Forbesがイノバティブな都市・世界4位として選出するまでに変貌した。

イルマール・レーパルーは政治家に専任する前は都市計画を専門とした建築家で、その経験が変革を必要としていたマルメで遺憾なく発揮されたが、将来あるべきビジョンを掲げ強いリーダーシップで大きな改革を進めていった功績に称賛の念を感じずにはいられない。

※ ダイバーシティ、ダイナミズムにあふれるマルメは、同時に社会的格差が大きく失業率がスウェーデン全体の平均と比べてもかなり高いという問題も抱えている。

※ マルメ市に関する主な統計数字はMalmö Snapshotに詳しい。

※ 冒頭の写真は放置されたままのドック(前方左)とMedia Evolution(前方右)。後方には54階建ての高層高級アパート、Turning Torso。

 

© Hiromi Blomberg 2020

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