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イケアと一緒にVR・ARを考える

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2016年のイケアの課題

イケアが現在直面している課題をVR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)を使って自由な発想で解決しよう!というワークショップが先週ルンドで開催された。(New business models with Virtual/Augmented Reality

参加したのは本家イケア側から2名の他、VRエンジニア、経営コンサルタント、ゲームデベロッパーなど合計25名程度。4組に分かれてまず状況把握から問題点の確認。次にアイディアを膨らませ最後にストーリーテリングの手法でビジネスアイディアのプレゼンまで、合計4時間ほどのワークショップは現在イケアと一緒にHTC Viveを使ったIKEA VR Experienceも開発しているマルメのJaywayが構成したよく練りこまれたものだった。

「より多くの人々がよりよい暮らしを送るためのサポートをすること」を自らの目標として掲げているイケアは、例えば現在韓国では用地確保の難しさから顧客数に見合った店舗を出店することができていない、オンラインショッピングは11カ国で始まっているものの店舗と融合したマルチチャネル化による優れたユーザー体験は提供できていない等の課題も多い。

ワークショップでは、世界各国の架空のイケアユーザー10名のペルソナから各グループ2名ずつ選び、彼らの日常生活にVRやARを持ち込むことでさらなる価値をどう提供できるかを考えた。

The sky is the limit! 

イケアのクリスも参加してくれた我々のグループが選んだのは、ベルリンに住む銀行勤務で時間がないがキッチンをリノベーションしたいゲイのカップルと、スウェーデンのマルメ在住で中東からの移民のバックグランドを持つインテリアコーディネータの若い女性の2つのペルソナ。

バーチャルイケアで待ち合わせして夜中に一緒に品物を選んだり、IKEAにオンデマンドで商品のパソナライズ化を発注できたり。今回のワークショップでは新しいビジネスモデルとして考えなければいけない Viability(ビジネスとして成り立つか?)、Desirability(みんなが欲しがるものか?)、Feasibilty(技術的に可能か?)のうち技術面は「なんでもできる」を前提に考えるということもあり、参加者全員あふれるようにアイディアがでてくる。

実際の生産や物流の面では課題は残るだろうが、VR・ARで実現する部分だけを考えると今アイディアとして思い浮かぶようなものはすぐに実現できてしまうだろうし、その可能性はおそらく無限大。考えないといけないのは多分どう使うかだけ。例えばこんな世界はイヤですよね。HYPER-REALITY (Youtube 6分)

創りたいものがあれば前に進むだけ

今回のワークショップが行われた日の午前中はVR関連の専門家によるいくつかの講演も同時開催されたが、その中でも時代を象徴していたのがワークショップにも参加していたJannike Grut。元(というか現在も)女優というバックグラウンドを持つJannikeは、子供向けの演劇などを手掛けるうちにもっと彼らの心を揺さぶりたい、提供する世界に引き込みたいと手法を探すうちにVRに出会った。

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“The ultimate empathy-machine”(究極の共感マシン)とVRを位置づけるJannikeは、学校の中で孤立している状況に変革を与えていくゲームや、今、難民が発生している現地の状況に身をおいてみるVR体験などの例をいきいきと見せてくれた。

ツールは安く手に入るし、資金もクラウドファンディングなど以前と比べると格段に調達しやすくなっており、プロモーションもSNSをうまく使えば無料でできる。VRを駆使し新しい世界を提供していくのが若いギークだけではなく、マチュアな洗練された女優であることに背中を押された一日だった。

© Hiromi Blomberg 2020

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