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「名もなき家事」をスウェーデンから考える

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先日、オフィスでの夏の到来を祝ったパーティーで話していると「そういえば、最近家事に関するおもしろいリストを見た」と教えてもらった。その『平等な一日のためのチェックリスト』には、84ほどのタスクがリストアップされており、どのタスクを家族の誰がどれくらいの頻度で行っているかが記入できるようになっている。

 
 
基本的な使い方は、2016年に日本で話題になった「AERA共働きの家事育児100タスク表」と同じで、お互いがそれぞれ行っている仕事を把握し、よりよくするにはどうするかのディスカッションを促すというツールだが、リストが作られた背景とタスクの内容が少し異なるので紹介したい。
 

家族内タスクの不均衡は社会的な損失

 
まずスウェーデンのチェックリストは、住民医療を担当する地方行政機関リージョン・スコーネ(Region Skåne)が、①病欠者を減らし②子どもがよい環境で健康に育つ当然の権利を促進することを目的とするプロジェクトの一環として提供されている。
 
育児や家事を公平に分担し育児休暇もより均等にとっている親は、離婚率やカップル間の所得格差も低く、またストレスから疾病休暇を取る人(これは特に母親に多い)も低いという研究結果がでている。更には、この土壌が子どもの心身の健康を促進するという研究結果もでており、チェックリストはこの流れを強化するために作成されている。
 
スウェーデンでは医療費や社会保険費に関する運営は国民の税金を預っている行政の責任なので、家族内不均衡の是正することにより全体としての社会的費用を抑えるという一環の流れが見えてくる。母親だけが長く育児休暇をとることが夫婦、個人間の所得格差に繋がり、それが年金受取額も差として反映されてしまうのも行政側としては改善していく必要がある。
 

本当の「名もなき家事」とは?

 
リストの項目を見ると、スウェーデン側は家事だけではなく、こちらでよく使われる言い方だが「所得を伴う仕事」「所得を伴わない仕事」の両方がリストアップされており、かつ一番目につく「実際に実施するタスク」以外にも「ニーズを把握」したり「実行計画をつくる」タスクの重要性が強調されている。
 
タスクを「実施」する具体的な掃除や炊事といった行動はは目立つものの、一番難易度が高いタスクであるということもない。家庭を企業に置き換えると、現場の作業工程を担当する社員と比べて、経営計画やプロジェクトの推進計画、運営管理を行う経営者・責任者のタスクのほうが、難易度は格段に高いのは明白である。
 
日本で「名もなき家事」が語られる時には、子供の持ち物を揃え名前を書いたり、ゴミをきちんと分別したりといった日常の細々した際限のないタスクへの言及が多いが、今、家庭内で見える化が必要で、かつ多くの母親のイライラの原因になっているのは、この要となる「ニーズの把握」や「実行計画」部分の重要性が見過ごされ、タスクとして認識されていないところにあるのではないだろうか?
 
スウェーデンのカラフルなブラシ スウェーデンのカラフルなブラシ
 
ちなみに、パパの家事・育児参加先進国として世界から一目おかれているスウェーデンだが、やはり母親への負担が高いことはこのようなリストが作成されていることをみても明らかだ。
 
ただし家事全体の総量は
洗濯はまとめて週に一回くらい

食洗機はほぼ、どの家庭にもある

ゴミの出し方は複雑でも煩雑でもない

お風呂は基本的にはいらず朝シャワーだけがほとんど
などの要因で日本に比べると少ないように感じる。
 
さて、スウェーデンでは明日が夏至祭の祝日で、学校などはすでに今週から長い夏休みに入っている。今年は5月の天気がよく気温も高かったので、例年通り雨で冷たい夏至祭になりそうという天気予報をきくと、もう既に夏は終わってしまったような気にもなるが、日本ではもちろん夏はこれから!
 
皆様も体に気をつけて素敵な夏をお迎えください。
 
タイトル画像クレジット・Susanne Walström/imagebank.sweden.se

© Hiromi Blomberg 2020

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