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原子力発電所の終活

 

バーセベック発電所

2030 年までに2基の原子炉を廃炉にし、その建屋を含む計30ほどの敷地内すべての建設物を解体後、更地に戻す作業が始まっているスウェーデン南部にあるバーセベック原子力発電所。

 その廃炉・解体の過程の撮影を許可された写真家のクリストファー・グラナット(Kristffer Granath)の最初の半年間の印象的なコレクションがYoutubeで公開されている。バーセベック発電所はデンマーク首都コペンハーゲンから直線距離で23Km、私の住むルンドからは18Km程度の場所にある。

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早くも1980年に実施された国民投票で原子力発電所の段階的な閉鎖を決定したスウェーデンも、産業界や組合の反対、更には原子力に代わる代替エネルギーの確保などの問題から、その後国の方針も変わり、具体的に廃炉が決まったのは当時全国に12基あった原子炉のうちバーセベックの2基だけだ。

原子力発電所の新設計画はないものの、現在スウェーデンの電力供給量の40%を占める原子力は、今後も化石燃料に頼らない時代の重要な電力源としての役割を担っている。

閉鎖には約600億円と14年の歳月が必要

発電所は国民投票の後も稼働を続け、1号基の「ソフィア」が停まったのが1999年、「ベングト」の愛称を持つ2号基は2005年まで稼働していた。具体的な廃炉作業は2016年に始まり、稼働時は450人が働いていた広大な敷地内で、現在は50人の専門家が冷却水の管理やプラントのセキュリティ管理などに携わっている。

解体はこの後2030年までに50億クローナ(約600億円)かけて行われる予定で、これからの作業に必要とされる技術の専門家が今後数百人レベルで雇用される予定だ。

また廃炉・解体に伴って排出される使用済み核燃料および核廃棄物は、最終的にストックホルムの北にあるウプサラ市郊外にあるフォルスマルク原子力発電所の山間部に建設予定の最終処理場へと運ばれる予定となっている。

『2分でわかるバーセベック(スウェーデン語)』

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何が原子力発電にとって変わるのか? 

 各国のエネルギーの供給事情はその国の地理的、歴史的背景に大きく左右されている。

スウェーデンは化石燃料に乏しく水資源に富んでいたため、二酸化炭素排出につながる化石燃料による発電はほぼなく、共に40%程度を供給する水力発電と原子力発電に依存している。残念ながら太陽はあまりおでましにならないので、再生可能エネルギーとして一番開発されているのは風力発電だが、現在にいたっても全体の7%程度を占めるにすぎない。

国が持つ現在のエネルギー分野での最大目標は2040年までに達成を目指す「カーボン・ニュートラル」。地球温暖化を現実の問題として全員が意識したであろうこの夏、スウェーデン人のエネルギー政策に関する意識はまた変化したのだろうか?

また、この夏の異常気象を考えると、水力や風力の再生可能エネルギー発電が内合する不安定さのバックアッププランと共に政策を考えていくのは並大抵の課題ではない。

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Image: Per Petersson/imagebank.sweden.se

 

人けのあまりない発電所内の広大な敷地内をめぐりながら撮影を続けるクリストファーの言葉が印象的だった。

『70年代にこれほど巨大で複雑な建築物をつくれた当時のスウェーデン人の知識と技術に驚愕した。自分たちの世代が同じことを再生可能エネルギーの分野でできればいいと思う。』

 

 

© Hiromi Blomberg 2020

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